装飾音符とは、固定したデュレーションを持たず、素早く演奏することを意図された音符です。装飾音符は標準の音符の縮小版であり、通常は符尾にスラッシュを伴って表示されます。
装飾音符は標準の音符を小さくしたもので、デフォルトの設定では標準の音符に対し 3/5 の比率で縮小されます。
Dorico は、そのデザイン方針から生まれたいくつもの重要なコンセプトに基づいています。
Dorico SE のユーザーインターフェースは、すべての重要なツールがすぐに使えるように設計されています。この章では、ユーザーインターフェースの主な機能を紹介します。
プロジェクトとファイルの処理方法には、プロジェクトおよびその他の形式のファイルを開いて読み込み/書き出しを行なう他に、自動保存とプロジェクトのバックアップも含まれます。
設定モードでは、インストゥルメントやそのインストゥルメントを割り当てるプレーヤー、フロー、レイアウト、ビデオなど、プロジェクトの基本的な要素を設定できます。また、たとえばレイアウトに割り当てられたプレーヤーを変更するなど、それらが互いにどのように作用するかも設定できます。
記譜モードでは、楽譜を入力できます。また、アイテムの位置や音符のピッチを変更したり、音符やアイテムを削除したりして、楽譜を編集できます。ツールボックスとパネルを使用して、最も一般的に使用されるすべての音符および記譜項目を入力できます。
再生モードでは、再生時に楽譜をどのように発音するかを変更できます。たとえば、ミキシングの調節、再生テンプレートの変更、VST インストゥルメントの割り当てなどを行なえます。
印刷モードでは、レイアウトを印刷したり、PDF や SVG などのグラフィックファイルとして書き出したりできます。
ページのサイズを変更したり、音符のスペーシングを調節したりと、プロジェクトのレイアウトとページの形式設定はさまざまな方法で制御できます。
プロパティとは個々の音符およびアイテムに適用される設定です。プロパティを編集することで、それらの外観や位置を変更できるものです。プロパティにはプロパティパネルからアクセスできます。
キーエディターは、複数のコンポーネントで構成される MIDI エディターです。音符やその他の再生アイテム (ノートベロシティー、MIDI CC、テンポを含む) を編集できます。キーエディターには、下ゾーンのキーエディターパネルからアクセスできます。
ミキサーでは、再生時のチャンネルのボリューム、パンニング、サウンドを制御できます。
Dorico SE におけるライブラリーとは、コンピューター上のすべてのプロジェクトで使用できる視覚的なアイテムとオプションを包括的にまとめたものです。出荷時の設定、デフォルトとして保存したカスタムアイテム/オプション、現在のプロジェクトのみで使用できるアイテム/オプションが 1 か所にまとめられています。
本書「記譜に関するリファレンス」は、さまざまな記譜記号の一般的な表記規則と、Dorico SE におけるその外観や配置の個別変更およびデフォルト設定編集を通した変更の方法について説明しています。
臨時記号は音符の横に表示され、それぞれのピッチを示します。臨時記号は譜表上に記譜される場合も、テキストに書き出される場合でも同様に音符の横に配置されます。洋式の調性に従う楽譜では通常、臨時記号は音符が調号に合致しないピッチに変更されていることを示します。
アーティキュレーションは、音符および和音の上下に記譜される記号のことを指します。アーティキュレーションを使用すると、音符のアタックや、記譜されたデュレーションに対して実際に音を出す長さを演奏者に指示することができます。
小節は通常、規則的な拍数のパターンを示し、これは使用される拍子記号によって決定されます。小節は垂直に引かれた小節線によって隣の小節と区切られ、各小節には固有の小節番号が付けられています。
小節線は譜表を区切る垂直の線で、楽譜を拍子記号に応じて小節に分割します。最もよく使われる小節線は隣接する小節間の縦線ですが、複縦線やリピート小節線などさまざまな種類があります。
小節番号は楽譜において重要な参照ポイントとして機能し、楽譜の時間的順序を明確にします。各小節に固有の番号を付けることで、楽譜の特定の部分を正確に参照できるようになり、演奏者はリハーサルやコンサートで容易に楽譜内の場所を見つけることができます。
連桁は、音符を符尾で連結してリズムのグループを示すもので、現在の拍子記号の拍節構造に従って変化します。
さまざまなデュレーションによる音符と休符の、さまざまな拍子および前後関係におけるグループ化と記譜の方法については、一般的な表記規則があります。Dorico SE では、音符は小節に収まるように自動的に調整されて記譜されます。
大括弧と中括弧は左側の余白にそれぞれ太い直線と曲線で描画され、インストゥルメントのグループを表わします。
コード記号とは、楽譜上の特定の瞬間における縦のハーモニーを記述するものです。コード記号は、プレーヤーがコード進行に合わせて即興演奏を行なうジャズやポップスでは多く使用されます。
コードダイアグラムはフレット楽器の弦とフレットのパターンを表わすもので、対応するコードを演奏する際に指で押さえる位置を丸で示します。コードの特定のシェイプをコンパクトに表示でき、特定のボイシングが必要な場合に便利です。
音部記号は、各組段の開始位置にあって譜表上の音符にコンテキストを付与する記号です。つまり、音部記号は譜表のそれぞれの線および間に音階のどの音が当てはまるのかを伝えます。音符に使用される加線を最小限にするために、通常はインストゥルメントの音域に応じて異なる音部記号が使用されます。
オクターブ線は、音符がスコアまたはパートに表示されるよりも高い、または低いピッチで演奏されることを示します。オクターブ線は破線または点線による水平線で、開始位置に斜体の数字が記されています。数字はフレーズのピッチが変更される数を示し、たとえば 1 オクターブは 8、2 オクターブは 15 となります。
キューとは、インストゥルメントのパートに異なるプレーヤーが演奏する楽譜のパッセージが表示されるもので、通常は長い休止に続く演奏部分やソロの前に、演奏を開始する時点をプレーヤーに示すためのものです。
強弱記号は音の大きさを表わし、表現テキストと組み合わせることで、楽譜をどのように演奏すべきかを明確にします。強弱記号は音量の瞬間的な変化や、指定のデュレーションによる段階的な変化を指示します。
数字付き低音とは、記譜されているベース音の上の和声を数字で指定する省略表現です。特にバロック音楽や初期のクラシック音楽で、ハープシコードやヴァイオルなどの伴奏楽器のパートに多く見られます。
フィンガリングとは、音符の演奏に推奨される指をプレーヤーに指示するための数字や文字のことです。これは、楽器習得中のプレーヤー向けの楽譜や、難しいパッセージで、特定のフィンガリングのパターンを使用すると音符の演奏が容易になる場合などに効果的です。
弦の指示記号は、一般的にギターの楽譜でどの弦で音符を弾くべきかを指示するために使用され、特に複数の弦で弾くことのできるピッチで役立ちます。
Dorico SE において前付けとは、スコアの 1 小節めより前に含まれるすべての情報を幅広く指します。
装飾音符の振る舞いは多くの点で標準の音符と同様ですが、符尾の方向、符頭に対する位置、および符尾のスラッシュの位置について、特有の配置規則があります。
既存の音符を装飾音符に変換できます。これは、たとえば MIDI 録音を使用して入力した楽譜を編集する場合などに便利です。
既存の装飾音符を、それらの元の位置から始まる標準の音符に変換できます。たとえば、フローの開始位置の一連の装飾音符を弱起の標準の音符に変換する場合などに行ないます。
初期設定では、適用される符頭が小節の最初の音符である場合を含めて、装飾音符は符頭の直前かつ小節線より後に配置されます。個々の装飾音符については小節線より前に配置できます。これによりたとえば、小節の最初の標準の音符が小節線から離れすぎないようにしたり、装飾音符が拍より前に演奏されることを表わしたりできます。
装飾音符の符尾を斜めに横切るスラッシュは、多くの場合は装飾音符の異なるタイプを区別するために使用されます。符尾にスラッシュが付いた装飾音符は、アチャカトゥーラまたは短前打音と呼ばれ、多くの場合は非常に速く演奏されます。符尾にスラッシュの付かない装飾音符は、アポジャトゥーラまたは長前打音と呼ばれ、多くの場合は短前打音よりゆっくり演奏されます。
装飾音符は音符を縮小したものであるため、装飾音符の符尾の長さは、すべての音符の符尾の長さに対するデフォルトの設定によって決定されます。
Dorico SE は隣接する複数の装飾音符が 8 部音符かそれ以下のデュレーションである場合、自動的に連桁で連結します。
スラッシュが付いた装飾音符と付いていない装飾音符は再生時に区別して処理されます。
音楽の一定したリズムの流れが、一時的な静止または一瞬の無音によって中断された後にまた再開する場合、これを示すさまざまな記譜記号が使用されます。最も微妙な効果を生むものとしてはテヌート記号があり、より顕著な効果は延長記号と休止記号によって表わされます。
調号は、スケールのどの音符にシャープまたはフラットが付くか示すことにより、現在の楽譜のキーを表示する記号です。調号は各組段の適用されるすべての譜表の開始位置に表示されます。
Dorico SE では、調性システムとは、調性のコンセプトを構成する 3 つの重要な要素を内包する言葉として使用されます。
Dorico SE では、歌詞とは歌手によって歌われるすべてのテキストを指します。
音符とは譜表上に配置し、音程を指示するための記号です。音符は通常、楕円形の符頭で、デュレーションによって黒玉か白玉で表示されますが、他にもさまざまなデザインの符頭が使用できます。
括弧付きの符頭は、音符の演奏が任意であること、編集上の音符であること、リピートのある楽譜のすべてのリピート回で演奏される音符ではないこと、またはピアノで鍵盤を押さえるが完全には押し込まないことを示すために一般的に使用されます。Dorico SE では、すべての符頭に括弧を表示できます。
符尾とは、2 分音符かそれ以下のデュレーションの音符の符頭から延びる垂直の線です。符頭のデザインとの組み合わせにより、それぞれの音符のデュレーションが明確に識別できます。
ハーモニクスとは、振動している弦の特定の位置に触れ、対応する倍音を鳴らすことで作り出されるピッチのことです。多くの場合、ハーモニクスは弦を押さえて出す音よりもピッチが高く、透明感のある澄んだ音になります。ハーモニクスには、ナチュラルとアーティフィシャルという 2 つのタイプがあります。
装飾音は、記譜上のピッチに加えて複数の音符を演奏することを示す記号です。これは音楽の装飾に使用されます。たとえばバロック音楽では、トリルやその他の装飾音による装飾が多く施されます。
トリルは 2 音を交互に素早く、トレモロのように演奏するもので、バロック、古典派、およびロマン派の音楽において一般的な装飾音です。トリル記号は通常単音に追加され、記譜上の音符とその半ステップまたは 1 ステップ上の音を演奏することを示し、トリルのデュレーションを示す延長線を表示できます。
アルペジオ記号とは、和音をアルペジオまたは分散、つまり和音を構成する音符を 1 つ 1 つ非常に素早く演奏することを示す垂直の線です。アルペジオ記号は、通常、垂直の波線で表示されます。
グリッサンドは 2 つの音符の間の継続的な音程の移行を示し、これはなめらかな移行と半音階による移行、いずれの場合もあります。これは直線と波線のいずれかで表わされ、指示のテキストが付く場合と、テキストが付かない線だけの場合があります。
ギターベンドはエレキギターで一般的に使用される演奏技法で、演奏者は音を鳴らしてから弦に力を加えて通常の位置からずらします。ベンドさせると弦の張りが強くなり、特有のピッチの変動が得られます。
ギターテクニックとは、ハンマーオン、プルオフ、エレキギターのビブラートバーを使ったピッチ変化など、ギター音楽に関連するさまざまな演奏技法の総称です。
Dorico SE におけるジャズアーティキュレーションは、ジャズ特有の装飾音を、特に金管楽器に関して幅広くカバーしています。
ページ番号はそれぞれのページに一意の番号を与え、他ページに対する相対的な位置を示すために使用されます。スコアおよびパート譜は、新聞や書籍と同様、ページ番号を使用して楽譜の正しい並び順を維持します。
ハープのペダリングとは、ハープの楽譜を記譜するための特定の要件を指す幅広い用語です。これは主に、近代的なコンサートハープのチューニングを変更するために必要となることが多いハープペダルダイアグラムについて使われます。
ペダル線は演奏者にピアノのどのペダルを使用するか指示し、ペダルを踏み込む深さやペダルを上げて余韻を消すタイミングなど、演奏上の指示も与えられます。
演奏技法という言葉は、演奏者が演奏する音符のサウンドに修飾を加えることを伝えるためのさまざまな指示を意味します。演奏技法の例としては、アンブシュアの変更や弓の位置の変更、または楽器にミュートを付けたりペダルを踏み込んだりすることなどがあります。
ラインはピアノの楽譜でどちらの手を使うかや弓圧の段階的な変化を伝えるなど、楽譜の中でさまざまな意味を伝えることができます。Dorico SE では、ラインを使用して音符の間を垂直線、横棒線、または斜めの線でつなぎ、さまざまなスタイルや外観を適用できます。
リハーサルマークは順に並んだ文字または数字であり、楽譜中の大きな変化を示す基準点として機能します。これらにより、演奏者はリハーサルで容易に全体と合わせられ、楽譜の時系列的な順序を明確にできます。
マーカーは時間上の特定の位置に紐づけられたラベルで、ほとんどの場合ビデオに関連して使用されます。これは通常、音楽的な盛り上がりが必要とされる重要な瞬間を示し、多くの場合は作曲者がこれに合わせて楽曲の形を整えるプロセスに使用されます。
タイムコードは通常ビデオとの関連において、時間上の正確な位置を示します。これを使用すると、音楽と動画など複数の要素間の正確な同期を行なえるようになり、基準ツールとしても使用できます。
パッセージを繰り返す楽譜において、リピート括弧は各繰り返しでどの小節が最後に演奏されるかを示します。必要な場合、毎回異なる終わり方にできます。これはボルタ線または 1 番括弧と 2 番括弧と呼ばれる場合もありますが、この説明書ではリピート括弧を名称として使用します。
リピートマーカーは音符や記譜記号の繰り返しを示すものですが、リピート括弧とは異なり、多くは楽譜の並びに従って進行せず、異なる位置やセクションにジャンプします。
小節リピート記号は、同じ内容の記譜を省略し、前の小節の音符や記譜記号を正確に繰り返すことを指示するものです。小節リピート記号は 1 小節、2 小節、または 4 小節の集合で構成されます。
通し番号付き小節領域を使用すると、追加で記譜することなく特定の領域に小節数を表示できます。これは、繰り返される楽譜を演奏する際に、いくつの小節が過ぎたかを演奏者が把握できるようにするためのものです。
スラッシュ符頭は譜表上に記譜される斜線で、明確なリズムやピッチの指定はないまま、演奏者が何かを演奏することを指示するものです。これには多くの場合、演奏者が使用するべき音符の組み合わせを指示するコード記号が併記されます。
休符は音が演奏されない時間を表わす記号です。それぞれの音符には同等のデュレーションの休符があり、たとえば、4 分音符の休符は 16 分音符の休符とは異なります。
スラーは先細の曲線であり、それがつないだ音符をレガートのアーティキュレーションおよびフレージングで演奏することを示します。
譜表ラベルは対応する譜表で楽曲を演奏する楽器を特定するために使用され、各組段の最初の小節線の左側に配置されます。譜表ラベルは一般的に複数のプレーヤーを含む楽譜で使用されます。
譜表とは、1 本の線または複数の線が集まったもので、その上に記譜された音符により音楽のピッチとリズムを示すものです。有音程楽器は伝統的な五線譜を使用し、無音程楽器は多くの場合一線譜を使用します。
ディヴィジとは、1 つの譜表を共有するプレーヤーが、通常は短いパッセージの間複数のラインに分かれ (divide)、そののち一緒 (tutti) に戻るものです。ディヴィジのパッセージは、すべてのラインを 1 つの譜表に記譜する場合も、複数の譜表にわたって記譜する場合もあります。
タブ譜は五線譜に代わる記譜法で、フレット楽器に使用されます。タブ譜では、楽器の各弦を表わす線の上に配置されたフレット番号としてピッチが表示されます。タブ譜はギターに使用されることが多いため、通常は 6 本の線が表示されます。
テンポ記号は楽譜を演奏する速さを示し、多くの場合テキストによる指示とメトロノームマークの組み合わせで表示されます。これはまたテンポ変更やテンポ指示などとも呼ばれます。
テキストアイテムはフロー内のリズム上の位置に存在し、一般的なテキストを楽譜内に表示できます。
タイとは、同じピッチの 2 つの音符をつなぐ曲線です。音符がその位置に適用される拍子記号の 1 小節のデュレーションよりも長い場合、Dorico SE ではそれらの音符が自動的にタイのつながり、つまりタイで連結された隣接する音符のシーケンスとして表示されます。
拍子記号は楽譜の拍子を示し、それが記譜されてから次の拍子変更記号が出てくるまでは、すべての小節に適用されます。拍子は音楽のリズム的な律動と、それがどのように拍と小節に分割されるかを示します。
トレモロとは、1 本の符尾をまたぐ、または複数の符尾の間に配置される太い斜めの線です。これは単音または複数の音符の連続で、音符を繰り返すことを示すために使用されます。
連符は、現在の拍に応じた通常の分割とは異なる分割数の拍のことです。連符は、通常の分割パターンで拍内に入る音符よりも多いまたは少ない音符を拍に収める場合に使用されます。
無音程打楽器とは、特定のピッチにチューニングされていないすべての打楽器を含む表現です。これにはバスドラム、ギロ、マラカス、シンバル、シェイカーなどが含まれます。
フルートやトロンボーンなど多くのインストゥルメントでは通常、それぞれの譜表には単一の声部による単一の旋律のみが含まれ、音符は譜表に沿って左から右に読まれます。1 つの譜表に複数の独立した旋律を表示する場合、各旋律はそれぞれ別個の声部に割り当てることができます。
装飾音符のサイズは、標準の音符と同じ手順で個別に変更できます。